『あめのおと』#12
なんとか隔週掲載は死守……!
本当にもう休日もお仕事ってやーねえ。
■仁さん
>骨まで溶かされそうです。
果たして骨の髄まで溶かされているのはどちらなのかって感じですけども。
まあ、あれです。テクニックは無いけど若さがあるって感じで!
■LRさん
陽菜は、まあ心配性な幼なじみポジションですからして。
ただしこう、割合に根性も悪いというか、狙うべきところは狙っていきますよ!というタイプというかー。
なんだか自分でも何ゆってんのかわかんなくなってきました。
■takさん
そりゃもう近藤さんだって使い切るさ!ってペースでしてたっていう事で一つ。
あと、あり物は古かったので、いろんな意味でスリリングだったという驚愕の事実も(笑)
雨音さんは、多分学生の頃とかは無自覚に色んな男が勘違いしちゃったりさせたりしたんじゃないかと思います。女友達いなさそうだな……。
/12
雨の止まない空を見上げながら、雨音はそっと息を吐いた。まるでその吐息の音だけで、静寂が破れてしまうような気がしたからだ。
銀線に覆われた世界は、まるで隔絶された場所のような錯覚を感じさせる。
いいや。事実、この屋敷は世界から隔絶されていた。
隔絶していた。
深海雨音は夫を喪ってから、ずっと、世界に取り残されていたのかも知れない。
そんな世界に滑り込んできたのが、桐山祐樹という少年だった。彼は雨音が驚くほどの強さで彼女を求め、彼女が忘れていたものを思い出させた。
振り返れば、敷かれた布団の上で眠る祐樹がいる。眠っている理由も知っている。あれだけの運動量では、いくら祐樹が若いといっても疲労の一つだってするだろう。
求められているという実感が、雨音の中の凝り固まった何かをほぐしている。それがただの欲情なのだとしても、それの何が悪いのか。
祐樹の年代で全てを誓うなんて、ありえない。彼らには未来がある。今はまだ、彼らは学ぶための時期だ。中には急いで大人にならなくてはならない人間も、急いで大人になる人間もいるだろう。だが大半は、今はまだモラトリアムを許される時期なのだ。
だからこそ、雨音は彼に何も約束をしない。
祐樹は、時々なにかを求める風な素振りをする。けれど雨音はそれに気付かない振りをする。
これは大人の狡さだろうか。ふと、そんなことを思う。
夏も終わる。
学校が始まれば、祐樹の足もまた遠のくだろう。1週間以上、彼は深海家に泊り込んでいたのだから。
「――宿題だとか、大丈夫なんでしょうか」
ふと不安になった。
◇
結論としては、どうやら大丈夫ではないらしい。
雨音が眉間に皺を寄せて、祐樹を家へと帰したのはその日のうちだった。
最後までモゴモゴと何かを言いたげにしていた祐樹だったが、雨音が懇々と言い慣れない説教をしたことで、ようやく首を縦に振ったのである。
傘をさして歩み去っていく祐樹の背を見送り、雨音はほっと息を吐く。
自分との関係で、祐樹がやるべき事をやらないのは間違っている。少なくとも、大人としての深海雨音は、そう考えていた。
深みにはまっている自覚はある。少なくとも若い男にのぼせ上げているという自覚もあった。だが、だからこそ。そこに明確な線引きが必要なのだと感じていた。
祐樹は、自信をくれた。
だが同時に、それが雨音を怯えさせた。一度ついた自信は、すなわち奪われる可能性を秘めているから。
二学期が始まれば、祐樹はまた自分と同年代の人間たちの世界へと戻る事になる。そこには有澤陽菜もいるのだろう。彼の好意は嬉しい。嬉しいが、けれどもそれが初めての女に対する執着心であろう事も、雨音には理解できていた。
不意に電話のベルが鳴る。
物思いから覚めたように顔を上げ、雨音は電話を取る。
「はい。深海ですが」
『姉さん? 私』
「初音? どうしたの?」
『んー? ちょっとお酒飲んでたら、姉さんの声が聞きたくなってさぁ』
ケタケタと笑う初音。少しばかり声の様子がおかしいことに、雨音も気付いた。
「初音、大丈夫なの?」
『んー。別に大丈夫だってば。ちょーっとカレシと別れただけで』
クスクスと笑う声は、けれども震えていた。
「初音……」
妹に恋人がいる、という事も初耳だった。だが、それも破局してしまったのか。
初音は情の深いところがある。別れで傷ついただろう事は想像に難くなかった。
『なんか悔しいなぁ。男ってさ、やっぱり若い子のほうが良いのかなぁ』
「――そう、なのかもね」
否定はできなかった。それは、雨音も抱える不安だったから。
『ったくさぁ。ちょっと後輩で可愛い子がいたからって、簡単になびいちゃってさぁ。飲み会の日にはお持ち帰りして、翌日には「別れよう」だって。ふざけんなってーのー!』
荒れた声に、頷く。今はただ、初音のしたいようにさせるのが上策だと雨音には分かっていた。
そっと床に腰を下ろし、初音の愚痴をただひたすらに聞き、頷く。
今晩は眠れそうにないかも知れない。
祐樹が帰ったことで、ガランとした屋敷の空虚さを感じていた雨音はそれを忘れさせる妹の声を聞きながら、そんなことを思った。
† † †
雨が降っている。
あの日も雨が降っていた。
むせ返るような草いきれ。雨に濡れた土の匂い。古びた畳の匂いと、汗の匂い。
男に組み敷かれ、男を組み敷き。まるで軟体動物のように絡み合い、まるでお互いの声を隠すように深々と唇を奪い合い。
男は止まぬ雨のように、次々と女を求め。
女はそんな男の劣情に、根から湧き上がる雫を止められず。
ああ。だからこそ、女には理解っていた。
深々と繋がりながら、分かっていた。
全身のありとあらゆる場所を知り、知られ。それでもなお、尽きることの無い劣情。
終わりは無い。終わるなんて、信じられない。
けれども女は知っていた。
理解していた。
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コメント
あ~、やっぱり忘れていたか宿題、完全に溺れているな、雨音さんに。裕樹君的には雨音さんに、と思っているけど、雨音さん側から見れば情事に嵌っているだけにも感じられそう。
ただでさえ、色々問題のある関係、想いだけでは続かない、裕樹君には足元もしっかり見て欲しい。まぁ、無理でしょうけど、良くも悪くも子供ですからねぇ、頑張れ。
最後のシーン、雨の情緒と、雨の中の情事。雨の中で溺れている、雨の音に溺れる。そんな事を感じさせる文章でした。そして、終りを思わせる文で、関係が終わるのか、物語も終りが近いのか?
1クールといえば、1クール分ですし、区切りが良いのでしょうが、強引に終りにしないで欲しいです。最後が駆け足気味ならないと良いのですが…、一読者の戯言なんで気にしないでご自身のペースでのんびり頑張ってください。私生活とお体の方が大事だと思います。
それでは、長文失礼しました。
投稿: LR | 2008年11月 2日 (日) 00時06分
「人は経験した事の無い事項に関して想像する事は出来ても想定する事は出来ない」
という言葉を思い出した。
人の出会いと別れ然り、夏休みの宿題の大切さ然りw
別れた時の祐樹君へのダメージを少なくしようとする雨音さんの優しさは、ともすればそれ自体が別れの原因になりかねないので善し悪しだなぁと思ったり。
しかし直接描写より間接描写の方がエロく感じるのは私が日本人だからか、はたまたただのムッツリなのか…
隠喩とか暗喩とかいう字面も何となくエロくね?
投稿: tak | 2008年11月 2日 (日) 22時13分